おのれに勝つのは、戦場で千万の敵に勝つよりもすぐれた勝利である。

―法句経―

「おのれ」、つまり自己というのは、私たちが認識し、意欲し、行動する主体となるものです。

要するに、真実の自分自身の事ですが、そもそも自分自身というのはいつも欲望や執着心に左右されていて、きわめてコントロールしにくいものです。

人は自分自身の事がよくわかっているつもりでも、実はわかっていなかった、という事があると思います。欲望や執着心に負けて、自分を見失ってしまったという時もあるでしょう。

様々な事柄が入り混じっているこの世の中では、自己を知り、「おのれ」に勝つ事はとても難しいのではないでしょうか?

このような欲望の誘惑を退け、なかなか制御できない「おのれ」にうち勝って善い事を行える人は、一千万の敵に勝つよりも立派な勝利者だといえます。

そして「おのれ」に勝つ為には、まず自己をよく知る必要があります。

晩年のブッダ釈尊は弟子たちに「他人をたよりとせず、自己をたよりとして生きなさい」と教え諭したそうです。

これはもちろん、欲望や執着にまみれた自己ではなく、そうしたものに左右されない「真実の自己」の事です。

ブッダの最終的な目的は、「真実の自己」を実現する事にあったのかもしれません。

あらゆる誘惑や欲望に振り回されず、自分を見つめなおしながら過ごす事が、自己を知る事になり、己に勝つという事につながってくるのかもしれません。